調査及び記録と作業計画~オーバーハング編~

メインロープ及びライフラインを緊結するためのそれぞれの支持物の状態

 ご存知のように、平成28年1月からロープ高所作業特別教育が義務化され、その中には、

労働安全衛生規則の条文

(調査及び記録) 

第539条の4

二 メインロープ及びライフラインを緊結するためのそれぞれの支持物の位置及び状態並びにそれらの周囲の状況

 (作業計画)

第539条の5

三 メインロープ及びライフラインを緊結するためのそれぞれの支持物の位置

と定められており、調査及び記録では、事前に支持物の位置・状態・周囲の状況を調べ、さらに、作業計画書に支持物の位置を記載することが義務化されています。

 ところで、ロープ高所作業(ブランコ作業)では、支持物の位置がすべて建物屋上に限ったことではありません。

約2年前の小生ブログで紹介したオーバーハングのブランコ作業。下の写真のとおりオーバーハングした上部の軒天井にはロープの支持物となるアイプレートが埋め込まれています。ここで必要なのが、リアンカー(Re anchor)=支持物(吊元)変更というテクニック。建物の軒天上に設置された支持物となるアイプレートに、労働者の下方に垂れているメインロープ及びライフラインを緊結し、オーバーハングガラスに接近して作業を行います。

 その手順は、建物屋上にある支持物にメインロープ及びライフラインの2本のロープを緊結し、下降。オーバーハング部まで降りてきたところで、労働者はロープにぶら下がった状態でさらに、このアイプレートの支持物にロープを緊結し、この2本のロープに乗り換えて作業に臨みます。

 ところで、安衛則第539条の4、この条文の『二 支持物の位置及び状態』。

つまり、(調査及び記録)では、メインロープ及びライフラインの支持物の状態を事前調査することが義務付けられています。すなわち、支持物は十分な荷重に耐えられる強度が必要となります。ちなみに、メインロープ及びライフラインの強度は、19kN=キロニュートン(約1.9トン)の引張荷重を掛けた場合において破断しないものとあり、この支持物にもこの最低強度が求められます。

 一般社団法人 全国ガラス外装クリーニング協会(JGC)出版の、ロープ高所作業(ブランコ作業)特別教育テキストでは、『作業開始前点検においても、躯体の亀裂の有無、踏む・引っ張る・たたくなどしてグラつきがないか異常音がしないか、十分に点検を行わなければならない。』とされています。

 建物屋上にある支持物の点検は比較的容易ではありますが、軒天井に埋設された支持物の点検は、はたしてどうでしょうか?

 下の写真は築20年以上経過した建物の軒天井。そこに2本のロープの支持物となるメンテナンスバーが設置されています。

 このメンテナンスバーは2本の支柱で支えられ、その支柱周辺には転移さびが発生し腐食も進行しています。さらに、手で引っ張ると左右に大きな揺れが発生。このオーバーハングした箇所でのブランコ作業のロープ支持物は、このメンテナンスバーのみ。さて、皆さんはこのメンテナンスバーをメインロープ及びライフラインの支持物として選定しますか?

 前述のJGC発刊の同テキストには、『異常のある支持物に対しては、使用を中止し支持物の変更を事業者、建物所有者に報告し、指示を仰ぐとともに記録しておくことも重要である。』と表記されています。

 さて、このオーバーハングした作業現場は年2回の定期ガラスクリーニングの仕様。小生がこのリアンカーによるブランコ作業に臨んだのが、2022年12月。その時に元請けであるビルメンテナンス会社、及び建物所有者であるビルオーナーに対してこの不具合を書面(記録)報告し、それから2025年4月現在まで、このオーバーハング箇所のガラスクリーニングは行っていません。

安全なロープ高所作業(ブランコ作業)は労働安全衛生規則に定めるとおり、調査及び記録が必須項目であり、それに基づいた作業計画の作成が労働災害防止の要となります。不安要素の高い現場の調査及び記録と作業計画は弊組合が代行します。

~ご安全に!~

(投稿者:H.O)

東京外装メンテナンス協同組合

03-5817-6977

https://garakuri.com

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です